踏み出す一歩一歩が重く、まるで枷を付けられた足を引きずって歩いているようだとアナキンは苦笑混じりにため息を吐く。
いつもならば体重を感じさせない機敏さで動けるというのに、今では意識して足を動かさないといつ止まってもおかしくないほど歩みに躊躇いがあった。
行き着く先に待っているものを思えば、それも仕方がない。
医療棟は昔から苦手だと、問題を摩り替えて顔をしかめた。
独特の刺激のある匂いが廊下にまで染み付いて、自分を包み込んでいるのではないかと息が詰まる。
外光を取り入れない造りになっているせいで、昼間だというのにここは薄暗い。
棟全てが大きな無菌室になっているのだから、窓などは設計上余計なものだったのだろう。
照明すら最低限にしか設置されず、それが余計に気味が悪いのだとアナキンは心中で悪態を吐いた。
ここは戦場の次に死の色が濃い場所だ。
生気に満ち溢れている聖堂の中でさえ、重く淀んだ空気は完璧に浄化されはしない。
近付きたくない理由はそれにもあった。
引きずられそうになる、今もずっと。
死者の念が棟全体にこびりついているような錯覚に陥りそうになるのだ。
空調に揺れる空気が誘うように頬を撫でる。
アナキンは、ぶるりと身を震わせて疑心を振り切ると、早く廊下を抜けようと歩幅を広げた。
アナキンが向かうのは廊下の突き当たり、入り口からもっとも離れている病室だった。
「人の出入りが少なく、逃亡もし難い」
そこに彼を、オビ=ワンを隔離した理由に、評議会がオビ=ワンを扱いかねているのだと悟る。
まるでオビ=ワンが捕虜のように扱われていることにアナキンは反発を覚えたが、しかし、それも仕方のないことなのだと割り切るしかない。
捕虜として捕えられていると思い込んでいるマスターに、捕虜に近い形でしか接することのできない我々。
まるでチープな喜劇のようだと皮肉ってみても、笑うことすらできない。
カツーン、カツーン、廊下を反響する靴音が、病室までのカウントダウンのように耳に突き刺さる。
一歩ごとに覚悟を決めて、アナキンは病室の扉の前に立った。
研ぎ澄まされた神経が、その奥にいる人物の呼吸すら感じ取るかのようだった。
手のひらは緊張からうっすらと汗を掻いていた。
それをローブで拭って、覚悟を決めると、ひとつ深呼吸をして扉のキィを解除する。
この期に及んで逃げ出したくなる心境を裏切るように、扉は軽やかな音を立てて開いた。




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どうしてか少しずつしか話が進みません…
肝心のオビはどこ行った?!
無事終わるのかが心配になってきた…