指先で触れる、あなたの手のひらはきつく握り締められていたから、大丈夫だと伝えたくて。
けれどそれが逆効果だと知ったのは、彼が恐れるように手を引いたからだった。
微かに震えているその手を胸元に抱きかかえて、あなたは僕を拒絶した。
「オビ=ワン…」
名を呼んでも効果はないことは知らされていたけれど、それでも呼ばずにはいられなかった。
「オビ=ワン…ねえ、マスター…」
不安なのはあなたの方だというのに、僕には縋るものがあなたしかいなかったんだ。
いつもジェダイとしての真っ直ぐな姿勢を表してくれていたあなたは今はもう見る影もない。
「彼から失われたものは大きい」
宣告されたのはいつだったか。
手術が終わり、手術着のまま現れた医師が言い辛そうに紡いだ言葉を、僕が理解できたのはカウンシルのマスターたちに報告しているときだった。
己の口から溢れ出る現実を客観的に見ているもう一人の僕が、麻痺した感情のまま、恐ろしい現実をすらすらと口にする。
オビ=ワンの目と耳が、もう使い物にならないだなんて。
「敵からの攻撃は交したようですが、目は閃光に焼かれ、耳は爆発音に鼓膜が破れています」
手負いの状態で敵を抹殺し、生きて帰ってこられたことが奇跡のようだ。
そのまま病院に担ぎ込まれ、医師が手を尽したが回復の見込みはなかった。
「ジェダイとして、もう彼は生きてはいけない」
数多の星を巡り行くことは、もう彼には不可能だ。
だからといって、ジェダイ聖堂から外の世界に放り出されたとしたら待っているのは悲劇だけ。
低下層の住人に捕えられ奴隷のように扱われるならまだいい。
彼の容姿に目をつけて色を売る世界に引きずり込まれでもしたら…。
いかに首都惑星として誉れ高いコルサントといえども、光の当たらない場所はある。
聖堂育ちのオビ=ワンは格好の餌食となるだろう。
それだけは阻止しなければならなかった。
ジェダイナイトとしてこれまで多大なる貢献してきたオビ=ワンを今後どう扱うか、カウンシルのマスターたちは思案しているようだった。
「オビ=ワン…ねえ、応えて下さい…」
一時的なショック症状で彼からフォースの流れを感じることはできない。
彼から抜け落ちてしまったフォースは回復するのかもわからなかった。
そのせいでオビ=ワンはフォースを理解できないでいる。
隣りに立っている人物が、自分のパダワンなのだと果たしてわかっているかどうか。
視界の閉ざされた暗闇の中、何も感じることができずに孤独の縁に彼は立たされていた。
「マスター…」
ベッドの上、身を起こしたまま瞬きすらせず、体を固くして必死に周囲を探っている姿が痛々しい。
僕はオビ=ワンの傍らに立ち、何もできない自分に歯噛みした。
彼が傷付いているのに支えにすらなれない。
むしろ手負いの獣のように警戒心を抱かせ、彼の感情を波立てているのだ。
「くそっ…!」
悔しさに握り拳でダンッと壁を叩き付けると、空気の動きを感じたのか、オビ=ワンの両肩が震え、一気に警戒心が高まった。
ピリピリと肌を刺すような緊張が僕たちを包み込む。
僕は保護者の庇護の下から独り放り出されてしまったような、足場の不安定な世界にいるようだった。
かつて、これほどまでに拒絶されたことがあっただろうか。
オビ=ワンはよく自分を叱ったけれど、最後にはいつも優しい笑顔を向けてくれた。
けれど手負いのマスターは今や僕を仇とばかりに敵意を向けてくる。
それが初めてのことなのだと気が付いて、僕は急に恐ろしくなった。
もう二度と、彼から笑顔を向けられることはないのかもしれない。
僕はマスターの側にいることが怖くなって、逃げるように病室を走り出た。
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やってしまった失明ネタ
しかもアニーはまだパダワンだったり
続くような続かないような…
(続きました…6/17)